2018.05.01

食欲をあやつる『ホルモン』のお話

おなかはいっぱいなのにデザートは別腹だったり、少量しか食べていないのにやけに満腹感を感じたり。その時々によって、食欲に波があるように感じることはありませんか?その原因の1つは「ホルモン」の働きにあるとされています。今回は、「食欲をあやつる『ホルモン』のお話」をテーマにお届けします。

 

食べ過ぎの一因とされる3つのホルモン

食欲は、脳の視床下部にある摂食中枢と満腹中枢によってコントロールされています。私たちは、空腹感や満腹感をこの2つの中枢からのシグナルを受け取って感じているのです。
食欲は人が生きていくために必要不可欠ないわば「本能」。健康の証とも言えますよね。問題なのは、「本能が必要とする以上の食欲」。過剰な食欲とどう付き合っていけばいいのかを知るためにも、過食の一因と考えられている代表的な3つのホルモンとその働きについて学んでいきましょう。

 

食欲を抑える「レプチン」

レプチンとは、脂肪細胞が発する満腹を知らせるホルモン。摂食や成長ホルモン分泌調整の中枢である視床下部に働きかけ、食欲を調整・抑制する働きがあることから、ダイエットや体重管理に大きな影響を与えると考えられています。
脂肪細胞が満腹のシグナルを発信するのだから、太っている人(多くの脂肪細胞を蓄えている人)の方がレプチンの影響を受けやすいのでは?と思うかもしれませんが、体脂肪が多い人はレプチンが発するシグナルを受け取る受容体の反応が鈍くなっている(レプチン抵抗性)ため、シグナルに気付きにくく食べ過ぎがちに。その結果、脂肪細胞がさらに増えて一層シグナルを受け取りにくくなるという負のスパイラルに陥りやすいのです。このレプチン抵抗性は、ダイエットなどで体重(脂肪細胞)が減れば改善されますが、きちんと改善するまでには多少のタイムラグがあり、これがリバウンドの一因とされています。このタイムラグを暴飲暴食することなく乗り切ることが、ダイエット後の体重を維持する大きなカギといえそうです。

 

精神的安定や幸福感に関わる「セロトニン」

セロトニンは、精神的安定や意欲、満腹感などを伝える神経伝達物質。喜びや快楽を伝えるドーパミン、怒りや恐怖などを伝えるノルアドレナリンなどの暴走を防ぎ、食欲を抑制する働きもあります。
セロトニンの9割以上は、消化管や血液中に存在していますが、食欲と深く関係するのは、体内にあるセロトニンのうち2%に満たない「脳内セロトニン」だとされています。セロトニンは、精神安定作用と食欲を調整する働きを併せ持つため、不足してしまうと、精神不安定と食欲昂進が連動しやすい傾向にあるとのこと。たとえば、イライラしている時に無性にスイーツが食べたくなったり、生理前になると焼肉やステーキを食べたい欲求に駆られた経験はありませんか? あれは、甘いモノや肉を食べるとセロトニン分泌が増えるからだそう。また、生理前は黄体ホルモンや卵胞ホルモンの関与でセロトニンの働きが低下するため、イラついたり、甘いモノや肉類への欲求が高まりやすいとされています。とはいえ、肉や甘いモノを食べてセロトニンの分泌が増えるのは一時的なこと。セロトニンの分泌を増やして食欲を適正に保つためには、
①日光を浴びる
網膜から入る太陽光がセロトニン神経の活動を活性化させる
②リズミカルな運動をする
ウォーキングや深呼吸、咀嚼などを行うとセロトニン神経の活性化につながる
③グルーミングを心がける
家族との食事や友達との何気ない会話など、人と近い距離で触れあうことがストレス緩和につながる
ことが良いとされています。

 

食欲を増進する「グレリン」

 

グレリンは、食欲を増進させる働きを持つホルモン。主に胃で産生され、グレリン値が増えると視床下部に空腹のシグナルを送ります。
前出の食欲を抑制するレプチンとは、拮抗しながらバランスを保ち合う関係にあり、レプチンが増えるとグレリンの作用は抑えられ、レプチンが減るとグレリンの作用で食欲が増すメカニズムになっています。レプチンとグレリンによる食欲の抑制と増進のバランスを安定させるには、体脂肪を増やし過ぎないことや規則的な生活習慣を心がけることが重要だとされています。

 

 

ここまでの話をまとめると…

①レプチンの食欲抑制作用を機能させるには、体脂肪を増やし過ぎないことが重要
②セロトニンの精神安定&食欲調整作用を機能させるには、規則正しい生活習慣が大切
③グレリンによる食欲増進作用は、食欲抑制作用のあるレプチンとの均衡維持がマスト

ということに。
つまるところ、規則正しい生活習慣が各ホルモンの分泌調整や均衡を保つ後押しをすることで、食欲のコントロールも適正に行われるということですね。

つい食べ過ぎてしまった時、「どうして我慢できなかったんだろう」と自分を責める人は少なくないはず。ですが、食べ過ぎのメカニズムは、我慢や根性で片づけられるほど単純ではなく、今回お話ししたようなホルモンの働きなどさまざまな要素が関係しています。食欲をあやつるホルモンの作用を引き出すよう努力しつつ、時には、ストレス社会で日々がんばっている自分を甘やかしながら、自分にとってベストな生活リズムを身に着けていきたいですね。今回も最後までお読みいただいてありがとうございました!